まだブルドーザーもパワーショベルもなかった時代、何万人もの人力のみで造られた、鳴尾の18ホール。自然の地形をそのままに生かしたコースは、芸術的とも称される佇まいの中に、穏やかにプレーヤーを迎える。
しかしひとたびクラブを握れば、コースが求めるショットや戦略ルートの厳格性にプレーヤーは居ずまいを正し、敬虔とも言える心境でコースと向かい合う。
白球を追って、谷を下り、丘を登り、風を読み、戦術を練り、自らの経験と技術の全てを、14本のクラブを駆使して球に伝えるその時、プレーヤーはみなゴルフの魔力にとりつかれてしまう。
やがて18の航海を終えた彼らの顔には、えもいわれぬ満足と、時としてわずかの後悔とが刻まれていることだろう。
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鳴尾では、「Classic and Original」のポリシーの下、開設当時と同じ高麗グリーンのままでベントと同等のパッティング・クオリティを実現するための研究と創意工夫を続けてきた。その結果、近年ではベントと同等の刈り高を保ち、ローラーをかけることなく、夏季でもスティンプメーターで10フィート以上の速さと揺らぎの少ない転がりを出すことに成功している。
確かにスピンがかかりにくくグリーン上でボールを止めにくいこと、四季折々でボールの転がりが違うことなどが、高麗グリーンの攻略を難しくしている。それは一方では、プレーヤーに技術の研鑽を要求し、ゴルフのより深い楽しみをもたらすことにもつながっていると言える。
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